2013年12月28日土曜日

何気なく蕾をつけて

枝は空へと向かう

こころなしか

生命の重さを支えている

入り乱れた枝は

一斉に

春へと向かう

春は空の方からやってくる

空色は日毎に変わってゆく

木々は萌えいずる

今年の春しかないかのように

咲き乱れようとしている

気付かぬうちに

いつの間にか

また生命を重ねようとしている

気付かぬうちに

いつの間にか

また春は訪れようとしている

(1996.3.11)
冷たい雨が降る。

街を覆う雨。

明かりも暗闇も

雨に降られている。

マンションの外には

樹や猫たちが

雨に降られている。

別のマンションの中で

彼女は雨に降られてる。

外灯は誰のためでもなく

公園を照らしている。

雨は街を覆い、

降っている。

明日の朝のことは

誰にも分からない。

こんな夜のあることを

彼女はきっと知らないだろう。

(1996.3.7)

2013年12月21日土曜日

一晩降り続いた雪が駅に積もる。

列車の屋根に降り積もる。

一晩静かに停まっていた列車が何台も白くなっている。

足跡の一つもない線路の中で。

じいっと停まっている列車を見ると

一晩降り続いた雪の事が想われる。

そこには誰もいない世界が続いていたんだ。

人間がいなくとも列車は雪と話をしていたのだとそう思う。

外灯の明かりに照らされて。

雪は降り続いていたのだと。

そう思う。

(1996.2.18)
ぽっかりと空いた心の穴からは
彼女を追い出せ

彼女の居場所はもうなく
消え去ってゆけ

別によく知り合った仲でもあるまいし
ぽっかりと空いたその穴は
いつかなる恋人のために

そこに何時までも
その女が居続けてはいいはずがない

さらば記憶ヶ淵の水底に沈め

(1995.12.15)
ふぅっとつくため息
人生の独り言

知らぬ間に
首を振っている自分

全てが叶わないと
望まないと思っているのに

全てうまくはいかないと
考え続けているというのに

君の事を想っている

2013年12月14日土曜日

透き通るように、僕へと
一直線に射してくる月の光。

空の星さえ、輝きを増す。
澄んだ空、遠くから
届いた乾いた風
冷たく、雲さえも吹き飛ばしてしまう。

遠くの海では雪が降るという。
山里ではしんしんと積もっている事だろう。

ゆっくりと、しんしんと降り続く
白い淡雪の果てに、

ここでは降るものは何もない。
ただ、白い月の明かりが
それを見た者を突き射している。

誰にも、月の色を
染めることはできない。

どうしても忘れる事のできない
人が、心の中に残っている。

月は、その人の事までは染めてくれない
ただ、まっすぐに突き抜けてゆく。

まっすぐに照らす。
絶対に忘れたりはしない。

(1996/1/30)
まっぴら御免だ
誰かに頭を下げるのも
謂れのない常識に従うのも

誰かに気を使うのも
ましてや
足元を見られるなぞ

それくらいなら
自由に飛び回っている方がいい
屈服するくらいなら
いつまでも自由な方がいい

絶対に断わっておく
救われないくらいなら
平然と歩いている方がいい

例え、そこが見捨てられた大地でも
最後の船が出てしまった後だとしても

まっぴら御免だ
こんな詰まらない理由で
この紙に署名するなぞ

ましてやこの紙で人間が分かるなどという
馬鹿を相手にするのなぞ。

(1996/01/29)

2013年12月6日金曜日

ぽっかりと浮かんだ明かり
まっ暗な深夜に流れている雲

寒い夜には公園の木々に目が行く
誰もいない公園に風が吹いている
空には美しい星達

この街には建物ばかりで
目の行き場はないけれど
風が吹く

人のいない空
僕になれる時間
一人きりでいるつもりはないけれど

こうして深夜に一人でいる時間は
いつか二人の時間へと変わってゆくだろう

そうなっても僕は
人のいない空を
忘れはしない

(1995/12/18)
人には過去がある。
過去の積み重なりの上に今の自分がいる。

そう思っていると。
いつの間にかそれが殻となってゆく。

ちょうど蝶が殻を破って出てくるように
古い衣を捨て去る。

捨て去られた衣は忘れ去られてゆくのだろうが。
それが嫌なら仕方がない。

昔が何時までも忘れられないというのなら
その衣は誰か人にあげるがいい。

新しい日々は向こうからやってくるはず。

(1995/11/29)

2013年12月1日日曜日

君が会釈をした?
君と少し近づき合えた?
これが本当の話しなら
明日はもっと近づき合える。
明日はきっと君が近くになる。
昔の神話にあったっけ。
一目見ると口も開けず
目も動かせず
石になるという
美しい魔女の話しが。

昔の神話にあったっけ。
決して振り向いてはならぬ
いとしい人の物語りが。

君を見ると
どうして目は透明になり
舌は流れ去るのだろう。

昔の神話にあったっけ。
魔女を打ち破る勇者の話しが。
その目を見ずに突き進む。

昔の神話にあったっけ。
そこには恋の泉が満ちている。

(1995/11/24)
猫が歩いている
公園。

霜のおりた落ち葉の上を
やせた猫。

朝の光を受けて
陽射しへと
歩いている。

どんな事があったって
日なたで座って
いる猫は
いつも一言だけの挨拶をする

(1995.11.24)