君の驚いた顔
何を見たのかは
知らないけれど
どういう思いに
捕らわれていたの
きれいな顔だった
とても優しくて
話しをするのが
とても楽しそうで
とても柔らかくて
一緒にいるのが
とても嬉しそうで
まっすぐ見つめて
君はもう一人の
大人の女だ
(1996/07/11)
風が通り過ぎてゆく
いつの間にか
声は聞こえなくなった
僕は動かない
この足で歩いてゆくから
風の舞いを見上げる
僕らをもう乗せてはくれない
遠くに行くことになるよ
遠くの木を揺らし
通り過ぎてゆく
僕は見送り
そして、また会える日を願う
人間は遠くへとは行けない
いつでも自分の目の前を歩いてゆく
どこまで行っても僕はここにいる
だから僕らは声をかわすのだ
(1996/07/10)
風の吹く夜だ
全ての人に訪れる
あの娘の上にも訪れる
夜になれば本当の時間が始まる
だからだろうか?
僕は夜の風に吹かれるのが好きだ
そこにはいつも本当の自分がいる
誰でもそうだ
だから夜に人は
本当に大切な人と
過ごそうとする
いつでもそう思いながら――
(1996/06/07)
重く肩にのしかかる
なんと重い街だ
辺り一面に張り巡された
人と人と人
誰もが自由に
手足を伸ばす事もできない
時間が速く流れなければ
誰も支えきれないだろう
次々と溢れ出さなければ
いつか支えきれなくなるだろう
誰かが風通しを良くしなければ
終には一歩も歩けなくなるだろう
風通しをよくするには
中心を一気に引き抜けばよい。
(1996/05/09)
夕暮れに満開の花
モノクロームに溶け込む
春の空
どこまでも冷たく
どこまでも遠い
永遠の空
誰よりも美しく
誰よりも愛おしい
この春の女性(ひと)
黄昏に永久の別れが訪れる
二度と会えないかも知れない
美しい女性(ひと)
闇は二度と明けぬかも知れないと
不安になって/僕は
君の下で/暫く/立ち止まっていたんだ
(1996/04/11)
暖かな陽射しを受け
注がれる黄金色の液体。
コップへは美しき透明。
音を立てて弾ける
人を誘う至福の時。
本の中で永遠を生きる
友に誘われて
酔いに任せ
時を過ごす。
春の日は永遠だ。
花は刻々と春を急ぐ。
人は横になって
どこへも行こうとしない。
あるものはただ一つ。
この黄金に白き実りの命だ。
開かれた一冊の本と
春の陽射しがよく似合う。
(1996/04/10)
寒い日だ、
櫻の花が
夜空の下で
ふるえるでもなく
散るでもなく
咲いている。
今年の櫻は
どうも心へと
染みてこない。
寒空のみが
僕の心を
ふるわせる。
まだ春は訪れず。
それは僕にこない春。
早すぎた櫻の花。
今はまだ
北風の方がいい。
コートを着て
歩いている方がいい。
春にはまだ遠く
櫻の花には
咲いたとは言い難い。
(1996.4.2)